区民防災組織(通称は防災会)と呼ばれるものは、災害対策基本法第5条2項で規定されている、区民による自発的な防災組織のことで、法律では「市町村長は、・・・住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織(第8条第2項において「自主防災組織」という。)の充実を図り、市町村の有するすべての機能を十分に発揮するように努めなければならない」とされています。
この法律を受ける形で、昭和50年代、当時の自治省は全国の自治体に対し自主防災組織の結成推進を呼びかけました。自治省から通達を受けた多くの自治体は、地域の住民組織としては、すでに古くから「町会」あるいは「自治会」があるので、新たな住民組織を作ることは、屋上屋を建てるようなものだと考え、各町会・自治会に、この新たな自主防災組織の結成を要請しました。要請を受けた町会・自治会は、従来からの町会組織をそのままに二枚看板を掲げる形で、もしくは町会・自治会の一部門として自主防災会組織位置づけ、適当に役員を割り振って自治体に登録しました。しかし、この二つの組織は本質的に異なるもので、片や町会・自治会は、任意加入の町会員によって構成され、かつ法的には何の根拠もない任意団体であるのに対し、一方の自主防災組織は、明確な法的根拠を持った組織で、会員という概念はなく、地域住民全員を対象として支援することとされています。したがって、公的資金の助成対象ともなるものです。とは言え、実際には、すでに組織としての活動の実績を持った旧来の町会・自治会の協力と連携がなければ活動が成り立たないため、町会・自治会と自主防災組織とを明確に区別せず、町会・自治会活動の一環として取り仕切っているところが殆どです。しかし問題は活動資金で、公的な助成金だけでは十分な活動ができないため、多くの自主防災組織で、町会・自治会から活動資金の補てんが行われていますが、これは、町会・自治会に加入していない住民は、無償で恩恵を受けていることになり、自主防災組織としては独自の資金調達の方法を工夫する必要があります。
自主防災組織が実行すべき活動としては、平常時は、地域住民の防災意識の高揚のための広報活動・地域の結束強化のための各種のイベント開催・防災訓練の実施・防災資機材の準備・地震発生時の応急対応マニュアルの作成・地域内の各企業との災害時の応援協定の締結・防災まちづくりの推進などであり、地震が発生した時は、地域の支援本部を立ち上げるとともに、救出/救護・初期消火・災害時要支援者支援・安否確認・互助生活などを行うことが期待されています。
令和5年度版消防白書によると2023年現在、自主防災組織活動カバー率は、全国では85.4%、東京都は78.5%となっています。
練馬区では300以上の防災会が、日ごろから防災・放水訓練や会議を開催し、防災意識・技術の向上に努める一方、民生委員等と連携し、安否確認訓練などの活動も行っています。