この地域の地震被害の予想や防災資源、行動指針を知ることで、
モノ・行動・心の備えをするための情報です。
具体的なイメージトレーニングは、いざという時、
とっさの行動や冷静さを取り戻すことを助けます。
体験訓練、講習などは、この地域だけでなく各地で年間を通して開催されています。
知識や体験をテコにして3つの備えを進めていきましょう。
◆首都直下地震の危険が迫っています
文部科学省の地調査部会の長期予測によれば、発生の確率は、今から30年以内に70%と言われています。その根拠としては、首都圏では、過去100年間に4~5回の直下地震が起きていること、また、首都圏に大きな被害を引き起こす大正関東地震(1923年)のような海溝型の地震は、約200年間隔で起きていますが、この関東地震からおおよそ100年が経過しており、過去の地震履歴から見ると、後半の100年間に、数回の直下地震が起きていることが知られているからです(下図参照)。直下地震の震源がどこになるかは特定できませんが、過去の事例から見て、東京湾北部直下、多摩直下、立川断層帯の3か所が高い可能性があると考えられています。
◆この地域で想定されている被害
東京都は、予想される首都直下地震への対策を立てるために、被害の程度を想定して、その結果を平成24年に公表しています。当然、震源がどこになるかによって全体の被害の大きさや、大きな被害を受ける地域は異なってきます。
東京の23区に関して言えば、東京湾北部を震源とする地震による被害が一番大きくなっています。東京都の想定によれば、その規模はM7.3程度で、各家庭で最も火を使っている冬の18時に起きた場合の被害は、その時の風速を8m/秒程度であったと仮定して、死者9,700名、建物の全壊・焼失棟数304,300棟と計算しています。
練馬区について言えば、建物被害は、全壊 1,946棟、半壊 12,956棟、焼失 3,106棟(合計18,000棟)とされています。これは、練馬区の全建物棟数、約143,000棟の12.6%に当たります。また、人的被害は、死者145人、負傷者 3,265人となっています。練馬区の総人口は、約71万人ですから、比率で言えば僅かですが、地震による怪我の約4~50%が家の中の家具やガラス器具の破損によるものですから、地震で動かないように固定をしておけば、十分に防げるものです。
◆地震後の生活は自宅で
地震が起きたら、皆一斉に避難しなければならないと考えている人が多いようです。
でも、自宅に倒壊の恐れがなく、周りから火災が迫ってくる心配がなければ、避難する必要はありません。
実際、小学校などの避難場所は地域の人たち全員を収容するだけのスペースはないので、家が壊れた人や火災で焼失してしまった人だけを保護します。
したがって、それ以外の多くの人は、地震後は自宅で電気・ガス・水道の復旧や商店の再開を待つことになります。
この間は、一人ではとても生活できないので、必要なものを融通し合ったり、区から配給される物資を引き取って皆で分けたり、共同で炊き出しをしたり、隣近所との助け合いが欠かせません。
◆ 火災の危険と対策について
揺れが収まったら、自宅からの出火がないか(煙、におい、音等)をまず確認し、ブレーカーを落として損傷した家電等からの出火を防ぎます。
自宅の安全が確認できても、余震に注意して窓や高いところからときどき外の様子をうかがい、目で鼻で、近隣に煙や火がないかに注意を払います。
もしも見つけたら、直ちにできるだけたくさんの人に声をかけながら火元の風上方向へ急いで避難します。
阪神淡路、東日本大震災での電気火災の発生状況と電気事業者の当時の対応、電気事業者や市民に推奨される対策等を、平成26年に経済産業省がまとめています。
(参照:経産省HP「自然災害(地震)時における 電気火災防止への対応について - 経済産業省」【PDF】)
これによれば、私たちができる火災防止対策として、感震ブレーカーの設置などが挙げられています。それに加え、誰もができることとして、可能な限り自分がいる建物内に出火の危険がないか点検することがあります。地震で停電した後、通電が再開した時には、家具等の落下物によって電気製品本体やコードが破損したり、スイッチが入ってしまったりした電気機器などからの出火の危険がありますが、それ以前の地震発生直後にも注意の必要な出火があります。例えば、上着を掛けてあったリビングのイスが地震の揺れでストーブの前に倒れ、上着が着火するような場合です。地震で暖房器具の熱源は断たれても、燃えやすい衣類がまだ熱い暖房器具の上に覆いかぶされば着火する危険があります。東日本大震災では、このような原因とされる火災が、約30件報告されているそうです。
落下物に遮られて直接見ることができなくても、煙や臭い、音で確認することができます。大揺れが収まって身体と建物が無事であれば、余震に注意しながら五感を使って可能な範囲でまず建物の中を点検し、煙や火を察知したら直ちに近隣に協力を呼びかけ、安全を確保して初期消火にあたることが重要です。
(初期消火は、天井に炎が届くまでが目安とされています。消火器を備えるか、一番近くにある消火器材の場所と使い方を確認しておきましょう。そのためにも懐中電灯など灯りの備えは必須です。)
そうしたことにならないよう、暖房機器をしっかり固定したり、その上に可燃物が落ちてこないようにしておくなど、未然の対策は今すぐ行い、普段から注意しておきましょう。
家具が倒れるほどの大揺れの後の火災防止をまとめると、
●発災直後の出火対策… 建物の中に煙や火がないか、目・鼻・耳で確認する
●通電時の出火を防ぐ… ブレーカーを落とし、可能な限りプラグを抜いておく
●通電後の出火を防ぐ… 電気機器を使用する前に、機器に異常がないか確認する
ことが大切です。
これらは、お金をかけずにできる対策です。自宅に限らず、自分がその時いる建物の中で、その場にいる人たちにも協力を呼び掛けましょう。命と建物に危険がない限り、こうした行動によってその後失わずに済む命があるかもしれないのです。